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【90年代ヴィジュアル系】名古屋系の代表的なバンドたち
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【90年代ヴィジュアル系】名古屋系の代表的なバンドたち

ヴィジュアル系の中でも、とりわけアンダーグラウンドな世界観で熱狂的なファンも多い「名古屋系」と呼ばれるサブジャンル、およびシーンの総称をご存じでしょうか。

起源は諸説あるのですが、1990年代初頭に活動を開始した黒夢とSilver-Roseが2大巨頭とされ、まだヴィジュアル系という言葉もなかった時代において、名古屋のインディーズ・シーンで活躍したバンドたちがいつしか「名古屋系」と呼ばれるようになったのです。

本稿では、そんな名古屋系と呼ばれた90年代のバンドたちを紹介しています。

ヴィジュアル系を掘り下げたい方はもちろん、日本のインディーズ音楽の歴史を語る上でも欠かせない名古屋系の存在をこの機会にぜひ知ってください。

【90年代ヴィジュアル系】名古屋系の代表的なバンドたち

Real of Love?Silver-Rose

黒夢と並んで「名古屋の二代巨頭」と呼ばれたバンドが、銀薔薇ことSilver Roseです。

黒夢よりも彼らの始まりは古く、Silver Roseが結成されたのは1989年のこと。

ヴィジュアル系の歴史という意味では、LUNA SEAやGilles de Raisなどのバンドと同期ということになるのですね。

そんな彼らはヴォーカリストのYowmayさん、ギタリストのHitoshiさん、ベーシストのKaikiさん、ドラマーのEijiさんという4人がオリジナル・メンバーで、その後ギタリストのKouichiさんが加入、ドラマーがKyoさんに交代してよく知られている5人組のSilver Roseが誕生しました。

インディーズながら全国区の人気を誇った彼らは、最初期はいわゆるイギリスのゴスやポスト・パンク、ポジティブ・パンクと呼ばれるダークな音楽性から影響を受けたサウンドを鳴らしていましたが、KouichiさんとKyoさんが加入後に音楽性の幅がぐっと広がってストレートなロックも含めたメロディアスなサウンドも展開、片方がクリーンのカッティングを鳴らすなどヘビー・メタルとはまた違ったツイン・ギターのアンサンブル、サウンドの中を動き回るベースと緩急自在のドラムス、力強く存在感を放つボーカルは確かな個性を感じさせ、後世のバンドにも多大なる影響を与えました。

残念ながら彼らはメジャーへと進出することはなく、1993年に解散してしまっています。

彼らが残した作品はそれほど多くはないのですが、初めて彼らの音楽に触れるという方であれば、解散した1993年に発表されたフル・アルバム『Labyrinth~迷宮~』を聴いていただくのがよいでしょう。

余談ですが、バンドの解散後にギタリストのKouichiさんはLaputaに加入、KaikiさんはRouageへ、KyoさんがMerry Go Roundに加入といったように、名古屋系の血統は脈々と受け継がれていくのです。

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十字架との戯れ黒夢

名古屋系と呼ばれたバンドたちの中でも最も知名度が高く、90年代ヴィジュアル系の形成に多大なる影響を及ぼし、日本のロック・シーンにおいて異彩を放ち続ける存在が黒夢です。

唯一無二の歌声とカリスマ性を持つ清春さん、ロックのみならずさまざなジャンルにおいてサポート・ミュージシャンとしても大活躍しているベーシストの人時さんの2人組というイメージが世間的には一番強いかもしれませんが、1991年に結成した時点での黒夢は4人組でした。

前身バンドのGARNETとして活動していた清春さんと人時さん、ドラマーの鋭葵さんに加えてGERACEEというバンドでギタリストだった臣さんというラインアップで、清春さんにバンドを組もうと誘ったのは臣さんであったことから、彼こそが黒夢の創始者といっても過言ではないという面もあるのです。

名古屋を拠点として中京圏で活躍した黒夢は過激なパフォーマンスとアグレッシブなギター・サウンド、デカダンな暗黒世界、日本的な哀愁を感じさせる旋律や詩情を武器としてインディーズ・シーンを席巻。

当時はまだヴィジュアル系という言葉はなかったのですが、化粧を施したバンドとしては東のLUNA SEAが絶大な人気を誇っており、似たようなバンドが多数現れる中で漢字を使ったバンド名やステージ名を採用、誰もやらないことをやるという清春さんの信念は今もって貫かれていますよね。

1992年に鋭葵さんが脱退以降はドラマーは安定することはなく、メジャー・デビュー後の1995年に臣さんも脱退してしまい、いわゆる「2人組のバンド」としての黒夢が誕生したのです。

その後の活躍と激変する音楽性についてここでは触れませんが、名古屋系のバンドたちが持つ音楽性の1つの特徴として、関東圏のバンドとは違う何かを求め、アンダーグラウンドの香りを残したダークなサウンドという意味において、その最もたる象徴がインディーズ時代の黒夢であることは間違いないでしょう。

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CHAOSDIE-ZW3E

DIE-ZW3Eというバンド名を初見で正確に読める方は、恐らくいらっしゃらないですよね。

DIE-ZW3Eと書いて「ディザイ」と読ませる彼らもまた、90年代名古屋系を深掘りしていく中で重要な存在です。

名古屋系のつながりという意味では、名古屋系最初期に活動していたMANICUREのメンバーが参加しており、メジャー・デビュー直後のROUAGEにベーシストとして参加していたギタリストのYUKIさん、黒夢の臣さんやOF-JのMASATOSHIさんが在籍していたGERACEEのベーシストであるTOMOKIさんといった面々が集ったバンドなのですね。

さらに言えば、SOPHIAのベーシストとして名を馳せる黒柳能生さんも一時期在籍しておりました。

そんなディザイというバンドの音楽性は、初期のミニアルバム『Di・es I・rae』にはカラーの違うツインのギターを駆使したサウンドや性急なビートに90年代ヴィジュアル系らしい要素は感じられるものの、名古屋系特有のダークネスとはまた違った魅力を持っていることはすぐに理解できるでしょう。

ボーカリスト、結城敬志さんによる張りのある力強い歌声で歌われる歌詞に描かれるのは、若者の持つ葛藤やナイーブな心象風景といった趣で、ヴィジュアル系にありがちなデカダンな闇とは一線を画す世界観が特徴的です。

1994年にリリースされたフル・アルバム『SIDE-B』は名古屋系ヴィジュアル系はもちろんLUNA SEA辺りからの影響も顕著に感じさせつつ、彼ら独自の音楽性が見事に花開いた名盤となっていますから、中古ショップなどで見かけたら確実に入手しておきましょう!

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Ask for EyesSleep My Dear

名古屋系の第一人者にして、90年代のヴィジュアル系の歴史において非常に重要な事務所である「ティアーズ音楽事務所」に所属したPENICILLINやmedia youthと並んで「3大バンド」とも呼ばれたSleep My Dear。

結成が1991年ですから黒夢と同期であり、Silver-Roseのローディーだったメンバーを中心として結成されたというまさに純度120%の名古屋系バンドなのですね。

1992年には初代ボーカリストのToshiyaさんが脱退、バンドのローディーを務めていたKöHeyさんが二代目ボーカリストとして1998年の解散まで活動を続けます。

名古屋系バンドの聖地と言える名古屋MUSIC FARMにて活動を続け人気を博し、初期のデモテープには黒夢の清春さんがコーラスで参加するなど、そういった点も当時のシーンのつながりを知る上で非常に重要なトピックですからぜひ知っておいていただきたいですね。

そんな彼らの音楽性は名古屋系特有の激しさやダークさも兼ね備えつつ、キャッチーでメロディアスな楽曲も臆することなく挑戦していたことがポイントと言えそうです。

Zi:KILLのEBYさんがプロデュース、1995年にリリースされたメジャー・デビュー作『SHAPE』の楽曲を聴けば、バリエーションに富んだ彼らの音楽性が伝わることでしょう。

残念なことに、その『SHAPE』はディスクの不具合で生産中止、楽曲の差し替えや曲順の変更なども加えた『CODE』が仕切り直しのような形でリリースされるなど、不遇なバンドでもありました。

余談ですが、KöHeyさんが焼き肉チェーン店のマネジャー兼店長として2018年にテレビ出演を果たし、当時をよく知るヴィジュアル系のファンたちをざわつかせましたことも記憶に新しいですね。

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自滅Lustair

1990年代半ばにはLaputaやROUAGEといったバンドがメジャーに進出し、90年代後半にFANATIC◇CRISISが商業的にも成功を収める中、名古屋系の宿命の如きダークな音楽性の血統は脈々と受け継がれ続けていました。

LamielのYuinaさん、keinのRukaさん、後にlynch.のギタリストとしてメジャーで名を馳せる玲央さんといった面々が在籍していたLustairはその代表的な存在であり、90年代後期の名古屋系を語る上で非常に重要な位置を占めるバンドです。

活動期間としては1996年から1997年と非常に短い、名古屋系の伝説とされるバンドにありがちなタイプで作品としては配布テープを除けば実質的なデモ・テープは『終焉の果て…』の1本のみ、CDとしての音源も残されてはいないです。

『終焉の果て…』を聴けば分かりますが、音楽性としては初期黒夢やLaputaへの憧れを全面に押し出した純然たる「名古屋系」サウンドで、『自滅』のように複雑なバンド・アンサンブルと語りを多く取り入れたボーカル・スタイルなど興味深い楽曲もありますが、個性という意味ではやや弱いかもしれません。

とはいえ、ここからLamielとkeinという後期名古屋系のカリスマ的なバンドが誕生することを考えれば、意義深いバンドであることは間違いないでしょう。

名古屋出身ではないですが、同時期に名古屋系バンドに影響を受けた実質的なDIR EN GREYの前身バンドであるLa;Sadie’s、9GOATS BLACK OUTの漾さんが在籍していた新潟出身のD’elsquelといった存在と比較してみるのもおもしろいですよ。

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桜の満開の木の下でMerry Go Round

Merry Go Roundの音楽を初めて聴いた方は、名古屋系の中でも突出してダークかつアンダーグランドな音楽性と世界観に思わず恐怖すら感じてしまうかもしれません。

名古屋系およびヴィジュアル系の歴史における極北のような存在、Merry Go Roundは1991年という名古屋系の中では早い時期に結成されていますが、1994年に活動を一時的に休止、実質的に活動を本格化させたのは1995年のことです。

フロントマンにしてバンドのコンセプトを担うリーダー、真さんの内的世界が色濃く音として表現されたバンドであり、メンバーも真さんを除いて流動的でしたが、Laputaを脱退したHidenoさんやSilver-RoseのKyoさん、Of-Jの准那さんといった名古屋系のオールスターな面々が参加していたことは特筆すべき点でしょう。

初期の黒夢が提示していた狂気や闇といった要素を極限まで追求しつつ、キャッチーだとかメロディアスといった言葉を一切排除したかのような実験的なサウンド・メイキング、語りのようなメロディ、文学的な素養を感じさせる歌詞で織り成す、個性的なミュージシャンたちが作り上げた音楽性はあまりにも独特で多くの人が受け入れられるようなものではありませんでした。

だからこそ熱狂的なファンが多く、彼らからの影響を公言するミュージシャンも少なからず存在しています。

インディーズだからこそ成し得たサウンドではあるのですが、実は彼らの作品のいくつかはメジャー流通していることにも留意しておいていただきたいですね。

とはいえ入手困難なタイトルも多いのですが、真さんは現在Lamielやdeadmanの活動で著名なaieさん、L’Arc-en-Cielのメジャーデビュー初期を支えたsakuraさんといった名うてのミュージシャンたちとgibkiy gibkiy gibkiyとして活動していますから、彼らの持つ底知れぬ闇に興味を持たれた方はぜひチェックしてみてください。

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